
SAFE (Sugadaira AED for Everyone)プロジェクトは日本ラグビーフットボール協会安全対策委員会の支援の下、帝京大学スポーツ医科学センターの鶴健一朗、桐蔭横浜大学スポーツ科学部の大伴茉奈、早稲田大学スポーツ科学学術院の細川由梨で運営している自動体外式除細動器(AED)普及プロジェクトです。
このプロジェクトの特徴は、ラグビーの安心・安全の実現に真剣な、協会・地域・専門家のリソースを繋げ、学生スポーツの環境改善というミッションにALL FOR ONEで取り組んでいる点です。
SAFEの主なステイクホルダー:
・日本ラグビーフットボール協会安全対策委員会
・セコム株式会社
・菅平グラウンド部会
・菅平高原観光協会
・ラグビーを愛する指導者・保護者・選手
・選手の安全安心をサポートするチーム/メディカルスタッフ
◾️菅平にある全てのグラウンド(105面)にAEDを配置(2022年度・2023年度・2024年度)
スポーツ中の突然死で最も多いのは心臓系の突然死です。心臓系の疾患には、AEDがあれば、救える命があります。このプロジェクトでは、菅平にグラウンドを所有されている旅館の方々にご協力頂き、利用者が練習や試合でグラウンドを使用する時には必ずAEDを持ち出すよう管理しています。多くの大会が開催されるサニアパークでも貸出があります。大好きなラグビーで、大好きな菅平で、悲しい事故は起こってほしくない。練習や試合に向かう前に「AED持った?」を合言葉にしましょう!
◾️救命講習会(2022年度・2023年度・2024年度)
2022年度:菅平グラウンド部会の方々を対象に、普段は災害派遣医療や救急医療の現場で働くDMATの方々による救命講習会を7月8日に開催しました。実技を伴う1時間の講習会にじっくり参加したことで「やっぱり忘れていることもあるね」、「かなり体力を使うね」などの気づきに繋がり、一次救命に関する知識や意識をアップデートして頂く貴重な機会となりました。
2023年度:国士舘大学大学院救急システム研究科から曽根悦子先生と大木学先生を本プロジェクトに招き、一次救急処置(BLS)講習会の充実化を図りました。今年度のBLS講習会は、チームスタッフおよび選手を対象に希望者の宿泊先で実施する形をとり、述べ48名の者が約50分の実技講習を受け、AEDの使用方法だけでなく、心肺蘇生法の練習を行いました。
2024年度:2023年度に引き続き、BLS講習を合宿で菅平高原に来ている高校生・大学生を対象に実施しました。今年度は150名以上の参加者を募ることができ、多くの選手や学生スタッフに万が一の際の「救命の連鎖」の重要性について伝えることができました。
◾️一次救急処置(BLS)に関する調査(2022年度・2024年度)
菅平高原の合宿場を使用するチームの顧問、指導者および引率者などの大人を対象にBLSに関する準備や心構えに関する任意のアンケート調査を実施しました(早稲⽥⼤学 ⼈を対象とする研究に関する倫理委員会 承認番号#2022-018)。回答者の68.3%はSAFEプロジェクトがなければグラウンドにAEDを持参することができなかったことが明らかになりました。また、一次救命処置講習への参加率は医療関連資格保有者では100%であったものの、それ以外の大人(顧問・指導者など)の中では約半数(55.5%)に留まったことから、チームメディカルスタッフのいない部に向けた重点的な人的および物的リソースの必要性が改めて確認されました。
2024年度の調査では、スパインボードの準備状況に関する質問項目を追加し、現在調査結果を集計中です。
◾️救急車の配備(2023年度・2024年度)
2023年8月14〜17日の4日間、国士舘スポーツプロモーションセンターが準備した救急車を菅平高原に配備し、上田消防署と連携することで、山岳部と市街部で救急車の逼迫が発生しないよう試験的な取り組みを行いました。この期間にSAFEの救急車が出動した件数は17件でした。
2024年度は民間救急車(ラグビーアンビカー)の菅平高原への待機期間を13日間(8月3、4、10~18、24、25日)に拡大して実施しました。期間中は医師1名、看護師1名、救急救命士 4名、サポート学生6-8名が常駐し、計47件の救急要請に対応しました。本取組は多業種・多機関の連携のもと、実現しています(上田広域消防、菅平高原クリニック、民間救急車、国士舘大学、帝京大学、日本ラグビー協会)。ラグビーアンビカーの運用は、学生アスリートの安全・安心につながるだけでなく、オーバーツーリズムによる地域医療負担の軽減という地域医療の課題解決にも繋がると考えており、一つのモデルケースとして確立できるよう次年度以降も継続する予定です。
◾️SAFE +ONE
2024年度からの新たな取り組みとして、競技レベルや有資格メディカルスタッフの有無を問わず、安全な試合運営を促すことができるよう、「+ONE」(プラスワン)を導入します。
「+ONE」は、両チームの代表者(SAやチーム関係者)が試合開始前に行う、緊急時の対応についての約1分間の打ち合わせです。菅平高原で配布されている「+ONE」のカード(AED設置旅館に配布予定)を用いると、(1)打ち合わせ参加者の確認と自己紹介、(2)応急手当の資機材の確認、(3)救急車の誘導経路、(4)頭部外傷発生時の対応、(5)ウォーターブレイクの有無、(6)落雷の恐れがある場合の対応、について簡単に確認と共通認識の構築ができるように構成されています。
救急対応が必要となるプレーはいつ起こるか分かりません。もしものための備えとして、AEDの配備と事前のコミュニケーションによる緊急時の対応フローの確認を、まずはこの夏の合宿期間中から当たり前にしていきましょう。
本プロジェクトをきっかけに、スポーツフィールドにおける安全・安心の意識が高まるだけでなく、合宿後、普段の活動場所に戻った際にもAEDへのアクセスや緊急時対応プランについて改めて見直すなどの、スポーツをより安全にするための具体的なアクションに繋がることを期待しています。

本プロジェクトに関するお問い合わせはこちらまでご連絡ください:safeprj2022 @ gmail.com