New Publication: 日本アスレティックトレーニング学会学術誌

日本アスレティックトレーニング学会学術誌に新しい論文が掲載されました。

山中 美和子, 細川 由梨, 金岡 恒治, 砂川 憲彦, 広瀬 統一, 川原 貴, 深町 花子, 青野 博. スポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書の推奨に基づいて収集されたデータの完全性及び妥当性の検証. 日本アスレティックトレーニング学会学術誌. 2024.10(1):11-23 .

本論文では、日本臨床ポーツ医学会と日本アスレティックトレーニング学会が共同で発表したスポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書にて定められた調査項目の完全性と妥当性を検証しました.その結果、提言書で推奨された調査項目の完全性は高く,欠損のないデータを収集することに適していることが明らかとなりました.一方で「疾病評価」や「疾病診断」の回答の一致割合や検者間信頼性は低かったことから、スポーツ現場における「疾病」データの記録方法についてはスポーツ医科学スタッフ向けの教育や、調査項目そのものの見直しなどが必要である可能性が示唆されました.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/10/1/10_11/_article/-char/ja

第13回日本アスレティックトレーニング学会学術大会

9月14-15日に中京大学で開催された「第13回日本アスレティックトレーニング学会学術大会」に参加しました。

今回はM1の大学院生、淺沼さんと小林さんがポスター発表を行いました。

淺沼富美, 細川由梨. 児童と保護者における日常的水分補給の実態調査と教育ビデオの有用性に関する研究 .  

小林和音, 細川由梨. 大学アメリカンフットボールチームにおける外傷・障害調査:NCAAとの比較.

また、細川准教授の海上保安官を対象とした暑熱順化トレーニングの実践報告(口頭)と、SPOとしても参画しているSAFEプロジェクトの実践報告(ポスター:筆頭 大伴茉奈先生)が優秀発表賞を受賞しました。

会場にはOGの田島さんも参加されていました!

来年は帝京平成大学@池袋での開催です。次もSPOからの演題登録を複数できるよう、皆で頑張っていきます!

Blog Update: KSI Summer Fellowship 報告第三弾

7月23日から8月25日まで米国University of Connecticut (UCONN)のKorey Stringer Institute (KSI)でSummer Fellowshipに参加してきた淺沼さんからの現地レポート第三弾です。

UCONN/KSI日誌第3弾!!!

こんにちはM1の淺沼です。私のUCONN/KSI日誌に長らくお付き合いいただきありがとうございます。今回が最後の日誌になりますので、ご一読いただけますと幸いです!

さて、あっという間に1ヶ月が経過し、私のsummer Fellowship期間が終了してしまいました…。もっとUCONNやKSIに居たかったなという気持ちが大きいです。今回は総集編ということで、今までのBlogでは紹介できていなかった“Heat Lab”や今回のFellowshipの振り返りができればと思っています。

まずHeat Labですが、中はこんな感じになっています!!!!実は中にトイレ、体重計など揃っているのでとても実験する側もされる側も便利な作りになっています。

この期間中に6回ほどLabでの実験に参加させていただくことができました。最大酸素摂取量(VO2MAX)の測定や、Heat Tolerance Testという室温40℃,湿度40%で2時間トレッドミルの上で歩行を行って暑熱耐性を測定する試験や、汗の成分を分析するために Sweat Wash-Downの試験に参加しました。教科書で読んだことや細川先生からお話を聞いたことはありましたが、自分自身が実際に手を動かして行ったことはなかったので、大変貴重な経験になりました。

この1ヶ月間で沢山のことをを経験し、学ぶことができたと感じています。また、FRRをはじめとした様々な活動を通して、ここに来ていなかったら会えていなかったかもしれない素晴らしい方々にもお会いすることができました。ここでの経験を存分に発揮して日本でも研究に精進してまいりたいと思います!!

最後に私がKSIのsummer Fellowshipに行きたいとご相談してからずっとお力添えくださった細川先生、推薦書を書いてくださいました大伴先生、曽根先生、そして様々なサポートをしてくれた家族、出発から帰国までの間に私に携わってくださった全ての皆様に感謝申しあげます。本当にありがとうございました。

Dear KSI Team,

Thank you all for your incredible support. I’m so grateful to have been part of KSI this summer. This fellowship has been a fantastic learning experience, and I’ve gained so much valuable knowledge. I couldn’t have done it without your support!

Thanks again, Fumi

M1 淺沼富美

Publication Update: Journal of Athletic Training

Journal of Athletic Trainingに新しい論文が掲載されました。

Tashima C, Otomo M, Hosokawa Y. History, Knowledge, and Education of Sport-Related Concussion Among College Athletes in Japan. Journal of Athletic Training. 2024.59(8):793-800.

本論文はSPOの研究科1期生の田島千尋さんが実施した日本の大学アスリートにおけるスポーツ関連脳振盪の既往歴、知識、および教育環境の調査を論文化したものです。欧米データが多い中、日本の大学アスリートを対象とした横断調査(n=593; 43競技)として大変貴重なものとなりました。

https://meridian.allenpress.com/jat/article/59/8/793/498557/History-Knowledge-and-Education-of-Sport-Related?searchresult=1

Blog Update: SAFE Project 2024

こんにちは。SPO修士1年の小林和音です。

今回は、本年度の長野県菅平高原でのSAFEプロジェクトについてご報告させて頂きます。

SAFE(Sugadaira AED for Everyone)プロジェクトとは、日本ラグビーフットボール協会安全対策委員会の支援の下、帝京大学ラグビー部の鶴先生、国士舘大学の曽根先生、大木先生、桐蔭横浜大学の大伴先生、そして早稲田大学スポーツ科学学術院の細川先生にて、2022年度より運営されているAEDの普及、菅平を安全な環境にする事を目指したプロジェクトです。

長野県菅平高原にある全てのグラウンドに AED を配置するほか、一次救急処置(BLS)講習会の実施や、BLS に関する調査を中心に取組みを進めており、今年度からは救急車の配置の取組みを本格的に進めています。

3年目となった本年度のSAFEプロジェクトでは昨年度、試験的に実施した民間救急車(現場急行車)の配備を待機期間を15日と拡大して本格的に実施しました。

現場急行車には医師、看護師、救急救命士とインターンの学生が乗車し上田消防署と連携しながら要請があった場合には現場に駆けつけて対応をしました。

現場急行車の他にもマンパワーが必要な場合に搬送の補助をする救急救命士やインターン学生が乗車する搬送補助スタッフ車や現場や菅平高原クリニックから二次医療機関に搬送する際に活用する搬送車両も同時に配備していました。

これらの各セクションが細かなフローに従って連携し、菅平高原部での緊急時に安全安心を提供できる救護体制の構築を目指して活動を行いました。

私も国士舘や桐蔭横浜、帝京の学生と一緒に現場急行車や搬送補助スタッフ車に乗り、要請に応じて現場に急行し、対応を行いました。

今まではスポーツチームの現場でトレーナーとして対応していたので、現場に急行して医療機関に搬送するという救護の現場は学ぶ事がたくさんあってとても刺激的な時間を過ごすことが出来ました。

医師、看護師、救急救命士、現場のアスレティックトレーナーやスタッフがチームとなって選手の安全を守るという「チーム医療」を実際の活動を通して経験できたことは本当に大きな学びであったと感じます。

BLS講習会では、チームの宿舎にお邪魔したり菅平高原クリニックの2階を使用したりしてチームスタッフや選手を対象に実施しました。

国士舘大学の先生方と救急救命士の学生の皆さんがBLSの講師を担当され、桐蔭横浜大学と早稲田大学から来ていた学生でサポートを務めました。

8/10(土)には高校チームの選手とスタッフ100人以上に対して講習会を実施し、胸骨圧迫やAEDの使用方法をレクチャーしました。

ラグビー選手やサポートするスタッフの方々が、人の命を守る行動を学ぶために意欲的に講習会に参加する姿勢は本当に素晴らしいことだと感じました。

今年度は、SAFEプロジェクト、特に現場急行車の配備を周知する為に各グラウンドを周回し、入り口や見やすいところにチラシを張るという活動も実施しました。

また、周回したグラウンドの入り口は救急車両の進入が可能か、ストレッチャーによる搬送時の注意点は無いか、急な坂道や階段が無いかなどの一口コメントと入口の写真を撮影して共有するという活動も一緒に実施しました。

入口が広くグラウンドの中まで車両が進入可能なグラウンドもあれば、車両が通れないような山道を登った先に位置するグラウンドもあり、改めて菅平高原の特異性を実感しました。

現場での救護活動をスムーズを行う為にも、車両の進入やストレッチャーでの搬送が難しいグラウンドで要請があった場合の対応を事前に話し合う事は非常に大切なことだと感じました。

まだそれぞれのグラウンドの情報をまとめている段階なのですが、完成したら菅平高原部全体のEAPの一部にもなり得る物かなとも思い、取組んでいる活動の規模の大きさにわくわくしました。

さらに今年度から始めた取組みとして「+ONE」の周知活動も行いました。「+ONE」は、両チームの代表者(SAやチーム関係者)が試合開始前に行う、緊急時の対応についての約1分間の打ち合わせです。

周知活動として菅平高原の宿に訪問し、「+ONE」のカードをAEDと一緒に設置して頂くようお願いしました。

3枚集めて菅平高原クリニックに持参して頂いた方に素敵なプレゼントを用意していたので、実際に使用したトレーナーさんやチームスタッフの方から「+ONE」を実施してみてどうだったかお話を聞くことが出来ました。

現場急行車にて緊急時対応を行っている現場で、相手チームのバックボードを使用しているチームが何件かあったので、資機材の確認含めて試合前の緊急時対応の打ち合わせの重要性を再認識することが出来ました。

菅平高原に滞在してSPO学生としてSAFEプロジェクトに参加する中で、様々なバックグラウンドを持つ方々との交流やスポーツ現場の安全についてお話する機会を通してたくさんの気づきを得ることが出来ました。

最後になりましたが、本プロジェクトを支援頂いている日本ラグビーフットボール協会安全対策委員会や菅平高原観光協会の皆様、また本プロジェクトに関わる全ての方に深く感謝申し上げます。

今後もSAFEプロジェクトや菅平高原の安全に少しでも貢献できるよう精進して参ります。

M1 小林和音

Blog Update: KSI Summer Fellowship 報告第二弾

7月23日から米国University of Connecticut (UCONN)のKorey Stringer Institute (KSI)でSummer Fellowshipに参加している淺沼さんからの現地レポート第二弾です。

UCONN日誌第2弾!!!!!

こんにちはM1の淺沼です。私のKSIやUCONNでの生活も残すところあと1週間を切ってしまいました…。到着当初は1ヶ月“も”あると感じていたのに、いざ生活が始まってしまえばとあっと言う間の1ヶ月間でした。

今回のBlogでは、8/18にMassachusetts州Falmouthにて行われた52nd ASICS Falmouth Road Race2024(FRR)についてお話しできればと思います!

FRRは7マイルの距離のロードレースで、労作性熱射病患者が多く出るレースの一つとして知られています。今回は、12,000人のランナーと200名を超えるメディカルボランティアの方が参加されており、私もメディカルボランティアの一人として、労作性熱射病やその他の暑熱関連の疾病、外傷等のプレホスピタルケアをフィニッシュラインのメディカルテントにて見学させていただきました。

時々小雨が降る時間帯もありましたが天候が落ち着いており、労作性熱射病の患者数は昨年に比べるとかなり少なかったとのことでした。ただ、私自身は初めて労作性熱射病のプレホスピタルケアを目の前で見ることができ、大変良い経験になったと感じています。先程まで会話がままならなかった方が、アイスバスに入って数分すると会話ができるとうになった様子や、かなり辛そうに車椅子でテントに入ってきた方が、アイスバスから出てご自分の足で笑顔で帰っていかれる姿、そして救急搬送者も0名だったことからも、プレホスピタルケアの重要性を再認識することができました。

I had a wonderful experience working as a medical staff member at the Falmouth Road Race. I am deeply grateful for the support and guidance provided by Dr. Jardine, Ms. Troyanos, and everyone else involved. Your help was invaluable, and I truly appreciate it.

吸収できることはスポンジのように吸収して、残りわずかなUCONN/KSIでの生活を楽しみたいと思います!

M1 淺沼富美

Blog Update: KSI Summer Fellowship 報告第一弾

7月23日からSPO修士1年の浅沼富美さんが米国University of Connecticut (UCONN)のKorey Stringer Institute (KSI)でSummer Fellowshipに参加されています。ここでは第一弾として、1週間目の様子を振り返っていただきました。

UCONNに到着してから1週間が経過しました!!

まだビックニュースはまだありませんが、UCONNやKSIの施設や、今、私が少し携わらせていただいているプロジェクトについてお話しできればと思います!

まずSPOの皆さんが気になっているであろう気候ですが…とても過ごしやすいです!朝方は曇りや霧、雨が多いのがたまに傷ですが、晴れていると湿度は日本に比べてかなり低い印象です。(KSIの皆さんは「蒸し暑い…」とおっしゃっていたので、日本の夏を体験していただきたいものです。)

KSIの施設は、「GAMPEL PAVILION」というバスケットボールアリーナの中にあります。研究室の他にもHeat Labにも入らせていただき、今まで画像でしか見たことなかった光景が目の前に広がっていて胸が高鳴りました! (今週はいくつかLabでの実験があるようで、参加させていただく予定です😉)

実験の他にTUFSS というプロジェクトにも少しばかりではありますが、携わらせていただいています。

このプロジェクトはKSIがアメリカ各州への訪問・情報提供を行い、スポーツ関連突然死を予防するために、それぞれのスポーツセーフティーポリシーをより良いものにアップデートすることを目的としている活動です。帰国後に皆さんに最新の情報をお届けできるようにいたします。(https://koreystringer.institute.uconn.edu/tufss/)

英語やデータの整理の仕方などまだまだ至らないところばかりですが、なんとか1週間乗り切ることができました。これから実験やFalmouth Road Raceなどイベントが目白押しで楽しみです!沢山のことを学んで帰って来れるように頑張ります☺️

M1 淺沼富美

Media Update: NHK WEB

NHK WEBに細川准教授のコメントが掲載されました。

厳しい暑さが続きますが、どれだけ気をつけていても労作性熱中症のリスクをゼロにすることはできないということを念頭に置いた上で、緊急時の対応を改めて確認したり、重症度の高い労作性熱中症(熱射病)が発生した際にはアイスバスが使用できるように環境を整えるなどの対策が必要です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240720/k10014517371000.html

Blog Update: The 1st HKATA cum APFAT Conference

こんにちは。細川です。

関東も梅雨明けまでカウントダウンが始まりましたね。

今年もありがたいことに連日様々な取材依頼が届き、今年もこの季節🌞🌡️がきた…!と慌ただしくしております。

さて、今回は7月13-14日に香港で開催された、The 1st Hong Kong Athletic Trainers’ Association cum Asia Pacific Federation of Athletic Trainers Conferenceのご報告です。

この学会は、香港で新たに誕生したHong Kong Athletic Trainers’ Associationと、アジアにおけるアスレティックトレーニング領域の発展を目指したAsia Pacific Federation of Athletic Trainersのキックオフを記念して、Hong Kong Sports Institute(日本でいうところの、国立スポーツ科学センターにあたる機関)で開催されました。香港の方々だけでなく、アメリカ、中国本土、台湾、日本からも登壇者が招かれ、細川もその1人として参加してきました。

細川が担当した講演はもちろん(?)労作性熱射病のプレホスピタルケアに関するもので、やはりアジア圏ではまだまだ「Cool First, Transport Second」の概念や、直腸体温でなければ正確な重症度を判定することができないことについて知識や実践が浸透していないことが分かりました。

元々夏の暑さには慣れているアジア諸国ですが、昨今の異常気象による酷暑はどの国の人も肌で感じているようで、「これまでは大丈夫だったけど、近々自分たちの現場でも労作性熱射病の対応をしなければいけなくなるかもしれない」という危機感は全体で共有できていたように感じました。登壇後には「しっかりとアイスバスを準備したい」、「直腸体温を測定できる体制を整えることができるか調べてみる」というコメントを頂けたのが印象的でした。

その他にも、救急対応、アスレティックリハビリテーション、エリートアスリートにおけるパフォーマンス科学、神経筋コントロールの科学、疫学研究、各種整形外科疾患の各論など、多岐にわたるアスレティックトレーニング分野の講演がありました。

本学会で大変印象的だったには、まだまだ世界と比べてアスレティックトレーニング領域が未開拓のアジアにおいて、当該分野の発展を目指すためには、アスレティックトレーナーだけで頑張るのではなく、スポーツ医科学に関わるあらゆる職種と資格の持ち主が「協働」することが重要である、と、何度もHKATAの代表、Ms. Kitty Auが唱えていたことでした。

日本でも、国内には様々なバックグラウンドをもつ専門家がアスレティックトレーニング領域で活躍しています。資格による住み分けや取り締まりは的確なサービスや消費者(アスリート)を守る観点でとても重要ですが、一方で、多様なバックグラウンドをもつ専門家が「アスレティックトレーニング」という合言葉で協働し、「スポーツメディスンチーム」として最高のサービスを提供することも、目指すべき姿の一つだと考えます。

アジアにおいて、日本のアスレティックトレーニング領域・業界が示せることは何だろうか。

日本におけるアスレティックトレーニング領域・業界を発展させるために、1人の研究者としてできることは何だろうか。

そのようなことを考えるとても貴重な機会となりました。

New Publication: Journal of Science in Sport and Exercise

Journal of Science in Sport and Exerciseに新しい論文が掲載されました。

Vanos JK, Joshi A, Guzman-Echavarria G, Rykaczewski K, Hosokawa Y. Impact of Reflective Roadways on Simulated Heat Strain at the Tokyo, Paris and Los Angeles Olympics. Journal of Science in Sport and Exercise. 2024. https://doi.org/10.1007/s42978-024-00294-9

近年、暑さ対策を意識した町づくりの一つとして赤外線を反射する遮熱舗装の活用が認められます。本研究では遮熱舗装による人体への暑熱ストレス軽減効果について検討しましたが、実際にはそのような効果は見込めず、直射日光を遮る方法(植樹や建物などによる影など)が望ましいという結果となりました。

https://link.springer.com/article/10.1007/s42978-024-00294-9